リノベーション中の空き家や空きビルに突撃し、どのような場所に生まれ変わるのか、変わったのかをリポートする「突撃!現場Report!」。第6弾は、新長田合同庁舎近くにオープンしたばかりの珈琲店。阪神・淡路大震災で一部崩れたという築100年以上の長屋の空間は、どのようにして憩いの場へと生まれ変わったのでしょうか。
あきらめずに、信頼できる業者を探す
2021年6月22日、店主の中野恵子さんはご主人の実家があった4軒長屋の一角で「自家焙煎珈琲 下町Cafe 茶豆」をオープンしました。こちらのスペースには元々米屋が入っていましたが、阪神・淡路大震災で隣の部屋が倒壊した影響で長らく空き家になっていたそうです。
空き地や空き家が残ったままで、元気がなくなった近隣の商店街を見るたびに胸が痛んでいたという中野さん。2019年に合同庁舎ができたり、2020年からアスタくにづか5番館の地下が改修されたりと、人が流れて周辺が明るい方向へ動きはじめたことで、かねてより夢だった自分のカフェをこの地で開くことに決めました。
しかし、壁はボロボロで空き家はかなりひどい状態。雨水が入らないように土間だった床の底上げをするなど手を入れる部分も多く、初めに依頼した改修業者の見積もり金額は、およそ800万円……! 焙煎機など厨房設備も含めると1,000万円を超えてしまいます。根気強く7社ほどの業者に相談し、最初の見積もりの半額以下に費用を抑えて、希望の内容で工事を請け負ってくれる大工さんをなんとか見つけました。そして何度も相談を重ねて、古民家ならではの天井の梁などを残しつつ、心穏やかに珈琲を味わえる空間が生まれました。
およそ1ヵ月の施工期間で完成したお店の様子をお伝えします。
【飾り窓】
サッシと引き戸を取り外して抜けを作ることで、奥の客席スペースの様子が分かりやすくなった。飾り棚の物を季節や気分で入れ替えるのが、中野さんの楽しみ。
【カウンター】
競りにかけられている一枚板の写真を施工担当者に送ってもらい、一番好きな色味の板を選んだ。女性も男性も落ち着くテイストだからか、カウンター席を選んで座る人も多い。
【奥の客席スペース】
年配の方や子連れの家族が過ごしやすいように、元々あった奥の部屋のフローリングを残した状態で客席として開放。階段下の押し入れだった部分は倉庫にする案もあったが、空間を広く取るためにこちらも客席にした。
「茶豆ブレンド」は、高品質なスペシャルティコーヒー豆をバランスよく使用。キャラメルやナッツの風味、フルーティーな香り、甘い印象を残して消えていく後味。持ち帰りの豆も安価で提供されていて、自宅でも淹れて味わいたくなる。
取材時はモーニングタイム。近隣の方々が和やかに団らんしたり、買い物の休憩に立ち寄ったりと、思いおもいの時間を過ごしていました。「今後はコーヒー教室も行っていきたいです。自分の好みのコーヒーを見つけてもらえる場所になればうれしいですね。近隣の方々とも協力し、この町を盛り上げていきたいです」と店主の中野さんは話します。お近くに寄られた際は、空間とコーヒーを味わいながら店舗リノベーションの参考にしてみてはいかがでしょうか。
掲載日 : 2021.07.27