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下町ケミストリー vol.02

三区長会談

増田 匡 | 中央区長

山端恵実 | 長田区長

古泉泰彦 | 兵庫区長

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ひとりの視点から街や取り組みを語るのではなく、対談を通して、地域や取り組みの中にひそむ多面的な魅力を探る座談企画「シタマチケミストリー」。

第2回は、神戸市営地下鉄海岸線が結ぶ長田、兵庫、中央の3区から、3人の区長が集合。対談場所となったのは、兵庫区御崎町の地下にある広大な御崎車両基地に停車する地下鉄車両内! 各地域のことから区長のパーソナルな話まで、ざっくばらんに語っていただきました。

まずは、それぞれの区自慢か

古泉 兵庫区は下町で人情味があふれて…っていう話は、長田区とも重なってくるところですけど、兵庫区にしかないものといえば、数々の歴史文化遺産ですね。明治時代の神戸の三大土木事業「烏原立ヶ畑堰堤」、「湊川隧道」、「兵庫運河」はすべて兵庫区にあります。「ノエビアスタジアム神戸」や新開地の寄席「喜楽館」といったそこにしかない集客施設があるのも、中央区は別にすれば、兵庫区ならではの特徴じゃないでしょうか。また、神戸市全体で人口が減少するなかで、中央区と並んで兵庫区だけが人口が増加しているんです。

山端 古泉さんがおっしゃられたように、長田区は下町らしい人の魅力というのがまず大きな特徴です。銭湯や喫茶店に子ども連れで行けば、ちょっと子どもから目を離していても周りの人が面倒見てくれたり、ちょっとおまけをしてくれたりというエピソードもよく耳にしています。そうした面倒見のよさというのは、神戸開港以来、外の文化を受け入れてきた神戸人の気質でもあると思いますけど、とりわけ長田ではそれがよく維持されていると感じられます。震災の経験から助け合うことが当たり前のものとして根付いているからでもあるでしょう。ちなみに、神戸市のなかでも銭湯と喫茶店の数は長田区が最も多いんです。たとえば銭湯は10軒、市全体で31軒ですから、3分の1が長田にあります。

増田 兵庫区に銭湯ってどれくらいでしょう。

古泉 どうでしょう…6軒かな。こないだ自宅のお風呂を工事していたので、久しぶりに兵庫の銭湯に行ったら、まるで常連みたいな感じで「ああ、どうもどうも~」って迎えてくれて。飲食店なんかでもそうですけど、懐の深い街だなと感じます。中央区はどうですか?

増田 私は、中央区って神戸をぎゅっと凝縮したようなエリアだと思っています。ポートアイランドも中央区なんですけども、ある意味でとても計画的に配置された新しいまちと、昔ながらの古いまちが混在していたり、西洋東洋という言い方だと違ってるかもしれませんけど、異人館と中華街が共存していて、多様性、多面性がとても感じられるまちだと思います。

古泉 兵庫区でいえば、東山商店街なんか私は毎日のように足を運んでますけど、中央区も商店街も多いですね。

増田 長年、商店街の担当(経済観光局商業流通担当部長)をされてきた古泉さんのほうがお詳しいでしょうけど(笑)、そうなんです。三宮センター街、元町、春日野道、大安亭、二宮……大安亭のにぎわいを見ていると、駅からのアクセスよりも個々の店の質なんやなって感じます。

山端 長田にも商店街はたくさんあるんですけど、今、考えているのは、商店街から商店街への回遊性を持たせることはできないかなって。たとえば、商店街同士で連携して一緒にイベントをするとか、「商店街の活性化と子育て支援」をセットでできないかなということで、商店街に子どもを預ける場所や遊具を設けたり、子ども達への体験メニューを準備したりしています。長田区に「なぁたん」というキャラクターがいますけど、そのベビー版のキャラもつくってみたんです。「ベビーなぁたん」です。

増田 おもしろい! その人形は誰がつくったの?

山端 婦人会の中に手芸に長けている方がおられて、その方に作っていただきました。かわいいでしょ(笑)。長田区では子育てを応援する取り組みをわかりやすく進めていくため、ベビーなぁたんを活用しながら、商店街での取り組みも一緒にできたらなって。

古泉 いいですね。兵庫区では東山商店街での「湊川夜市」というイベントが恒例になっていますけど、単にイベントを開くだけじゃなくて、流通科学大学の学生に応援に来てもらうなど、なるべく関わる人を増やしていくようにと考えています。

 

区長の仕事はめっちゃ面白い!

古泉 区長の仕事っていいもんでね、役所らしいものから民間に近いことまでいろんなグラデーションがありますけど、どちらにしても地域の方々と一緒に仕事ができるというのがとても幸せなことで。しかも、地域を歩けばみなさんに声をかけてもらえる。そんな職場環境って他にないですよ。

山端 ほんとに区長は、区民のみなさんとすごく身近な関係なんですね。じかにご意見やご要望を伺う機会も多いですし、それを受けて、市全体では実現が難しくても、区単位で課題にあわせた事業をダイレクトに展開することもあります。そうした地域の実情に応じて対応できるところがやり甲斐につながっています。

増田 おふたりの言われることと共通しますけど、都市ってちっちゃなエリアの積み重ねからできてますよね。私は学生時代、建築の勉強をしていて、神戸市にも建築枠で採用されたということもあって、ひとつひとつの建物や小さなものの集合体としてまちができているという感覚を持っていて、それぞれの地域で暮らす住民さんが何を考えて、どんな課題があってということを把握して、それにどう対応するかを考えていく区長の仕事がめちゃくちゃ面白いんです。大所高所から都市計画を考えるのも必要なことですけど、細かな課題解決を積み上げてまちを良くしていくというアプローチは、私の肌にとても合ってるなって思います。

古泉 夏なんかは土曜日曜もないですけどね。朝のラジオ体操から夏祭りまで行事がたくさんありますから。だからといって、そこに顔を出すのが仕事という感覚でもないんです。もちろん、どんな理由でも地域に足を運べば、「こんなことがあるんや」「こんなことで困ってるねん」って話を聞くこともあります。けど、そのおかげで区内の小さな課題とかも把握できるわけですから、大事な機会です。誰よりも区内のことは知ってるぞというくらいの気持ちではやってますね。

山端 現地に行かなければわからないことがたくさんあるというのは、私も本当にそう思います。

増田 ですよね。誰よりもまちのプロではありたい。

古泉 ただ、地域を歩いてるだけで、知らないうちに見られてるということはよくあって、後々、「区長あそこにおったな」って言われると、ドキッとすることもある(笑)。

増田 自分の区内では信号無視もできない(笑)。

古泉 それは区外でもしたらあきません(笑)。

 

区ならではの取り組みあれこれ

山端 来年、長田区は区制80周年なんです。せっかくの機会ですから、区民のみなさんと一緒に盛り上げていきたいということで、区の将来像をみんなで考えるワークショップを開いたり、80周年のロゴマークのデザインを公募したり、記念事業もみなさんからアイデアを募集します。

古泉 兵庫区では、2020年度から「兵庫区みらい会議」といって、地域活動に熱心な企業やNPOにアイデアを持ち寄ってもらって、まちづくり事業に反映しています。「兵庫区こどもプロジェクト」というのも進めていて、兵庫駅南公園をはじめ、いろんな場所で「こどもフェスタ」というイベントをやったり、オープンミーティングを開いたりしていますね。

増田 中央区の場合、大きな施策はだいたい神戸市のプロジェクトとして行われることが多いので、中央区独自の取り組みというよりは、細かな地域課題を拾っていってるような感じです。外国の方が多いので多文化交流の機会をつくったり、地域住民や企業と協働でコミュニティバスを走らせたり。

古泉 バスといえば、兵庫区は南北交通が長年の課題でしたけど、神戸マツダさんが社会貢献として「みんなのバス」というのを走らせてくれてます。これを区としてもPRするなど、地域に思いのある地元企業との連携を深めているところです。

山端 多文化共生は長田区の大きな課題ですけど、区役所にベトナム人のスタッフが居て、ベトナム人親子の支援を進めています。子どもは学校で学ぶので日本語が理解できても、ご両親は日本語があまり話せず親子のコミュニケーションが難しいというケースもあって、児童館に出張したり、区役所に来てもらったらいつでも対応できるようにしています。

増田 中央区の課題のひとつとして、住宅の9割が共同住宅で、人口が増えていても、人の入れ替わりがとても激しくて流動性が高いこと。要するに地域に愛着を持っている人というのが、人口に対する割合としては少ないのでは…定量的なデータがあるわけじゃないですけど、そういう感覚があるのでなんとかしたいと考えています。これって中央区にかぎらず、全国的な大都市の課題ですけども。

古泉 兵庫や長田はまだ地域コミュニティがしっかりしてますけど、その担い手が高齢化してるという課題を抱えています。70代前半くらいでもまだまだ若手、地域のためにばりばり働いてる方もおられますが、それをどう若い世代へつないでいくか。

山端 それは共通の課題ですよね。ダイレクトな解決策ではありませんけど、長田ではICT支援事業として、地域の情報発信やイベントのチラシづくりなど、高齢の地域団体の役員だけでは難しい広報等の部分を若い人に手伝ってもらうことも始めています。

増田 防災や街灯の管理など、これまで行政が地域の団体にお願いしてきたことがさまざまにあって、それはそれで必要なことなんだけど、それだけじゃない地域活動のあり方というのもこれからは考えていかなあかんやろうなと思います。若い人らが集まって、こんなことやってみたいという取り組みをどう支援していけるか。それによってまた新しいゆるやかな人のつながりも増やせたらなって。

 

シタマチの魅力をどう残していくか

増田 せっかく「シタマチコウベ」というサイトですから、下町の風景を残すためにということで、ちょっと話し合ってみたいですね。

古泉 私は、やっぱり商店街がまちの大きな魅力やと思っていて、商店街を通って通学する子どもらが「いってらっしゃい」「おかえり」って声かけされてる風景なんて下町らしいなと感じます。けれど、一方で、なくなっていくお店のあることはどうすることもできなくて。もちろん、応援はしていきますけどね。

増田 都市の開発の圧力にはあらがえないというのは大前提としてありますし、ただ単に下町の風景を残したいというだけではノスタルジーですよね。やっぱり人と人のつながりこそが大事なじゃないかな。といって、下町の風景を構成している銭湯、喫茶店、商店街、路地といったものもある程度なければ、人と人のつながりが生まれにくいとも思うので悩ましい…。

山端 昔からのまち並みって古い建物の集合体ですから、そうした古い建物にも人が住み続けることで維持されるものだと思います。それが空き家になって使われなくなれば取り壊しにもつながりますから、空き家の活用とその支援は欠かせません。また、下町の風景といっても、そこに価値を見出し、大切にしたいと思う人をもっと増やしていかなければいけないと思います。長田の「丸五市場」は営業しているお店は少ないですけど、そこでイベントを開けばかなりの人が集まります。それだけの魅力があるからなんですけど、やっぱりそうやって足を運んでもらう機会を増やす、そのための仕掛けをまちの人と一緒に考えるというのが私たちの役割だと思いますね。

古泉 兵庫区では10月に「兵庫運河祭」というイベントをやっています。イベントに対してはいろんなご意見がありますが、そういう機会をつくることで、子どもにとっての思い出にもなって、地域愛を育んでいくことにつながると考えていますので、そういう地域を盛り上げていく取り組みは長い目で見ても大事だろうなと思います。

増田 そうですね。下町の魅力や価値をちゃんと伝えていくことも大事ですよね。下町の風景と言いましたけど、長田にある「はっぴーの家ろっけん」のような活動って、とても下町らしい人間関係をもとに行われているけど、建物自体は特に味わいがあるとかではなくて、ごく普通の建物なんです。それもひとつの理想形かなって。残していくべきは人と人のつながりですから。

 

プライベートでハマっていることも
最後にお聞きしました

増田 最近、私は週1くらいの頻度でスパイスカレーの食べ歩きをやってます。中央区内だけでも10数軒はありますから。

山端 ぜひ紹介してくださいよ(笑)。

増田 いちばんの推しは三宮の山側にある「屋根裏カリー306」。あと、二宮から大安亭に移転した「FLAT FLAT(フラフラ)」もいいですね。どちらもカレーがおいしいのはもちろんですけど、店主の方がめっちゃ面白くて。

古泉 私は最近ということではないですけど、ずっとバイクが趣味で。今は、スズキのVストロームって1000ccのバイクに乗っていて、これでどこでも行きます。週末に区内のあっちこっちをまわらないといけないときにも、このバイクで。大型バイクなんで、停まってたら「あ、区長来とるな」ってすぐにバレる(笑)。

山端 写真を見るとめっちゃスポーティなバイクですね。遠くにも行かれますか?

古泉 最近はなかなか長期の休みがとれないけど、温泉が好きなんでね、湯村温泉とかは日帰りで行きますよ。

山端 私の趣味はちょっと恥ずかしいんですけど、変臉(へんれん)ショーが大好きなんです。顔の面が次々と変わっていく中国の伝統芸能です。最初はコロナ前に長崎の平戸で見てドハマリして。神戸だと南京町の春節祭には必ず見に行っています。登場の約2時間位前からいちばん前で待機して(笑)。

増田 あれって不思議な芸能ですよね。どういう仕組みで面が変わるのかわからなくて。ご自分でもやってる?

山端 いえいえ、見てるだけで。いつかはやってみたいんですけど、門外不出の技術らしくて、今は見てるだけで満足しています。

増田 編集部からの質問で、「ご自身を色にたとえるなら?」という、これまた一番むずかしい質問がありました(笑)。

古泉 まったく思い浮かばないんですけど(笑)、萌黄かな。兵庫区の「朝日温泉」によく行くんですけど、その天然温泉に浸かってるイメージで。

山端 私は青っぽい色。海や空や水の色。よく身に着けてもいます。

増田 私は白っぽい黄色、お月さまの色ですね。自己分析すると、自分から光を発するタイプではなくて、それをサポートする役割が多いかなって。

山端 謙虚ですね(笑)。

増田 いえいえ(笑)。それで優しく照らす月の色で。

古泉 上手にまとめられましたね(笑)。

 

 

掲載日 : 2024.09.17

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