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下町ケミストリー vol.01

林業のない町で生まれる木材の地産地消

山崎正夫 | シェアウッズ

竹内正明 | ウズラボ

服部真俊 | 株式会社三栄

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ひとりの視点から街や取り組みを語るのではなく、何人かの対談を通して、地域や取り組みの中にひそむ多面的な魅力を探る新企画「シタマチケミストリー」。

その第1回は「林業のない町で生まれる木材の地産地消」と題して、兵庫運河界隈を拠点に活動する3人に登場いただきます。
3人が集まったのは、竹内正明さんのお義父さんが建築木材の加工を生業として稼働させてきた小池加工所。創業から70年以上の歴史があるこの場所で、今年、新たな動きがあったようで、まずはそのお話から。

小池加工所の新しい展開のこと
この場所、何ですか?

服部 小池加工所がこの状態になって初めて伺いました。

竹内 服部さんと直接お会いするのは久しぶりですね。お父さん(服部鋭治・三栄社長)にはこの近所でたまにお会いするし、お姉さん(服部真貴・北の椅子と)とは「食べるをつくる」(https://tabetsuku.com/)のミーティングで毎月顔を会わせてますけど。

服部 山崎さんはそれぞれに会ってますよね。

山崎 そうですね。竹内さんには削り加工の仕事をお願いしたり、服部さんのところ(三栄)には自分が持ってない丸太を仕入れに行ったりしてるので。

 

服部 加工所内に小屋のようなスペースをつくったのはなぜですか?

竹内 義父が急に亡くなって、この加工所をどうしていくかって考えたときに、加工所内に区画されたスペースがあると活用の幅が広がると思い、いろいろとハード面の整備をする中で小屋をつくることにしました。この場所を1棟貸しするにしても事務スペースは必要ですし、シェア工房のような形で貸し出すにしても、運営していくには誰かが常駐しないといけません。こういう小屋があれば、埃や音の問題をクリアしつつ、仕事をしながら場所を共有できると考えました。

山崎 完成したのは、昨年の8月くらいでしたね。ちょうどここを使ってみたいという人が今年に入って出てきたので紹介しました。

竹内 それで山崎さんからつないでもらったのですが、これまでに会ったことがある人たちばかりでした。木工作家、建築設計、企画編集の3者がクリエイティブチームをつくって、この場所を使ってくれています。

山崎 その1人が、うち(MAR_U)に入ってた池内(宏行。木工作家)なんですよね。MAR_Uはシェア工房なので、前にいた子もこの近くで独立してますし、そうやって誰かが卒業してまた新しい人が入るというのは、いい感じの循環になってるなと思います。

 

場をつないでいくこと
そのための後継者はどこにいる!?

服部 そもそも神戸にかぎらず、各地で木材の工場がどんどんなくなっていますよね。

竹内 木材加工について言うと、仕事は減っていますし、高齢化が進んで、後継者も育っていない状況になっていると思います。

服部 ほんと、そうです。

竹内 ただ、本気で木材加工の事業をやろうと思ったらこうやっていろんな人が出入りする状況は困るわけで、人が集まってきて何かをするという、今のような場所の使い方にはならなかった。でも、うちは事業としてはもうやってないから、この場所を残しながら街に開くという考えにシフトできました。この場所に対する家族の思いもあり、工作機械も残ったままなので、それを誰かが受け継いでつないでいくのがいいと考えています。それが技術の継承や地域への貢献にもつながると思っています。

服部 ですよね。うちも場所と機械があるから、今、少しずつ進んでいる神戸市産材の活用とかも受けることができていて。うちの建物はやっぱり大きくて、けど、ぼろぼろで…。そんな中で、たまたま姉夫婦が家具の仕事をしていたので、建物の半分を「北の椅子と」(ヴィンテージ家具の販売&カフェ)に改装して、その家賃収入でなんとかやってきました。その形になって、もう11年経ちました。

竹内 「MAR_U」もそうよね。船大工の工房を受け継ぐという形で山崎さんが事業を展開しています。

山崎 そうです。建物をつぶしてしまえばそれで終わりやったけど、いろんな人があの場所をそのまま使ってくれる人を探していた中で、たまたま僕に声をかけてもらって。

竹内 人と場所とのいい出会いを生み出すマッチングが重要だと思います。その点、服部家は後継者がしっかりしてるから、そういう問題はないよね。服部さんで何代目でしたっけ。

服部 4代目です。5代目(息子)も一応いますけど、サッカーばっかりやっていて、それに引っ張られて僕もサッカーばっかりしてます(笑)。

竹内 後継者の育成を考えるなら、チームの舵取り役になるボランチをさせるのがいいよね。

服部 いや、ゴールキーパーをやってるので。

山崎 もっと視野が広い(笑)。

竹内 服部さんのところ(三栄)には、たくさんの銘木のストックがあって、あれもすごい価値があると思う。

服部 売れたら、ですね。

竹内 どう活用していけるかとか、考えることありますか?

服部 どうなんでしょう、私がこの仕事に戻ってきてからずっと残ってる木材のほうが多いくらいですから…。もちろん、使ってもらった方にはすごく喜んでもらえますし、価値も下がることはなくて希少性は上がるばかり。それでもストックしておくのにかかる金額を思うと…。

山崎 とはいえ、安くで売ってしまうような木じゃない。もう二度と買えない銘木だから。

竹内 いかんせん木材って場所をとるんですよね。山崎さんも木の置き場を試行錯誤してますよね。

山崎 置き場問題は大変。

服部 どう管理してるんですか?

山崎 僕の頭の中にしかなくて(笑)。だから、六甲山上の土場(ドバ)にあるかなと思ったらなくて、あ、山田の置き場かと思って行ったらそこにもない。あ、結局、MAR_Uにあったやん…とか(笑)。そんなことばっかりやってます。

 

業界内だけのことじゃなくて
全部がつながった話です

服部 私自身、この地域を守ろうとか盛り上げようとかって気持ちが強かったわけではないんです。ただ、いろいろやっていく中で、面白い人にたくさん出会って、いろんなつながりが増えることで、できることの想像が膨らんできた部分もあって。

山崎 あの場所がなくなるからその廃材をどうにか活用できないか、といった情報がもし入ってきたら、それを自分だけで留めるんじゃなくて、情報を共有するようなことは、もう、なんとなく当たり前にできてますよね。神戸ってそんなに大きくないから、そういうネットワークは形成されやすくて。

竹内 その話って木材だけのことじゃないなって思う。

山崎 ほんまそうです。

竹内 いろんな場で顔を合わせてきた人は多いから、多分野に知り合いが広がっています。木のことなら山崎さんや服部さんに聞こうとか、イベントのことなら、珈琲のことなら…っていう形で、適材適所で人と人をつなぐことができるような状況で、若い人も年配の人も混ざっている。ゆるくつながりのある、今の状況がいちばんいい状態かもしれないです。

山崎 それぞれが自分の事業で立ちながら、なにかあったときにはゆるく協力しあえる。その心地よさが神戸にはありますね。

服部 あえて木材の話でいえば、木材業界ってもともとつながりがないと成り立たない商売なんです。木だけでも、その加工だけでもいろんな種類があって、1社ですべてをやるのは不可能に近い。だからこそ、協力しあってというのは当然ある業界だけど、ただ、自分から積極的に発信するというのは決して得意じゃないところばかりで。ネットで検索しても何の情報も出てこないところも多いですから。

竹内 そういう意味では、我々も木材業界のど真ん中とはつながりが薄いかもしれなくて、そこからちょっと外れた人の方が多いかな。

山崎 そうですね。住宅だけやってますというような本流、というとおかしいけど、まだつながっていない人たちはもちろんいて、そこはまだこれからですね。

服部 うちも、工務店さんにはほぼ販売してないので、家具屋さんや建具屋さんとのつきあいの方がまだ多いくらい。そう思えば、山崎さんがいろんな人をこの地域に連れてきてくれるので助かってます。

竹内 山崎さん、地域外にめっちゃ行ってますよね。

山崎 今年は行きまくってます。地元に仕事がないから(笑)。ただ、こうした神戸のゆるいネットワークのあり方って外から興味を持ってる人がまだまだたくさんいるという感触です。やっぱり林業だけの話じゃなくて、小さなそれぞれの事業体がどうやって連携していくかってことへの関心なんだろうと思います。

竹内 うち(小池加工所)も、こうやって外に開いた状況にしてみたら、何してるの? ってフレンドリーに聞いてくれる人がたくさんいるみたいです。

服部 もうちょっとうちも発信して、アピールしていかないと。「北の椅子と」に来るお客さんも、隣で製材所が営業していることに気づかない人が多いんです。「北の椅子と」の紹介記事でも、「元・製材所で営業中」とか書かれてるし。こうやって製材所や加工所が当たり前のように街にあって、それが気軽に立ち寄れる場所にもなってる現状、これってやっぱり貴重なことなんだなと思います。

掲載日 : 2024.07.01

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