株式会社OGA 小笠原由晃さんにまつわる4つのこと 高齢化のすすむ町で事業を起こしていくこと

地下鉄海岸線和田岬駅から徒歩2分。昔ながらの銭湯や新進気鋭のパン屋「メゾンムラタ」など、下町情緒と新たな風が入り混じる「笠松商店街」。この振興組合の理事長を務める小笠原由晃さんは、株式会社OGAの代表取締役として、兵庫区を中心に介護事業や飲食店経営など様々な事業を展開しています。事業のこと、また、商店街の理事長としてのビジョンなど、下町から考える未来像を伺いました。

写真:岩本順平

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店を閉じることは止まることじゃない

実は去年、和田岬にあった「鬼平コロッケ」と「お好み焼き屋ひかり」を閉店したんです。業績が極端に悪かったわけじゃないけど、今うちの会社は拡大思考で動こうとしているから、期間ごとに事業を継続させるかどうかの判断をしていて。ひかりは8年間続けて、店長は4代目。彼に引き継ぐことも考えたけど、自分が立ち上げた店だから、自分たちで閉じたほうがきれいなんじゃないかと思って、自分たちの手で終わらせました。でも、僕たちの事業はむしろ広がっているんです。僕は、ちょっと変わったご縁から事業を引き継ぐことがあって。「鬼平コロッケ」は、経営者が高齢になってしまって、事業を辞めようとしているタイミングで引き継いだんです。昔から仲良しで、長田にある「ザ・うどん」の店主に話をつないでもらって、先代の鬼平コロッケの社長と会うことになったんですよ。社長からよくよく話を聞いてみたら、ものすごい自転車操業で、前日の売り上げを朝一番に各店舗に取りに行って、そのお金で当日の買い出しをして…という感じで。そこから仕込んで惣菜をつくり、各店舗に配送して営業をしていたから、お店は10時から空いているけど売り物はないという状態だったそうなんです。売り上げが低いと、その分仕入額も下がるから生産量も少なくなるという悪循環。だから、僕が引き継いでから、労働環境、生産効率、人員の配置転換、オペレーションまでを大改革。さらに、従業員の賃金を当時の最低賃金まで引き上げました。従業員からは拍手喝采やった(笑)

訪問介護から広がった様々な事業

今、株式会社OGAと有限会社神戸ケアエース、NPO法人K.O.B.Eという3つの会社を経営しています。神戸ケアエースは平成16年に訪問介護の会社として母親と一緒に立ち上げ、現在は、訪問介護のほか、障がい者の就労支援と介護タクシーの事業を行っています。株式会社OGAでは鬼平コロッケの運営や、ノエビアスタジアムにあるレストラン「ウルティモ」の運営、ブライダル向けの出張ヘアメイクなど、手広く展開しています。訪問介護事業をはじめるまで介護の経験はゼロで、母親と手探り状態でスタートしました。はじめの3年間くらいは、それだけでは生活できなかったので、短期バイトをしてやりくりをしていたんです。その後、介護タクシー部門と介護系の小さな会社をいくつか経営して、障がい者支援との2本立てで事業を展開してきたんだけど、途中からお好み焼きひかりの事業がはじまって。なので、介護事業とそうではない事業を分けようと思って、株式会社OGAを立ち上げました。介護事業を請け負うケアエースが有限会社やったから、株式会社への憧れみたいなものもがあったんですよね(笑)

受け継いだ、笠松商店街のこれから

介護事業をはじめた頃から、当時の笠松商店街振興組合の理事長をしていた方にお世話になっていて。その繋がりもあってノエビアスタジアムでレストランをはじめることになり、さらに、今では僕が振興組合の理事長をしています。理事長になってから、神戸市の3カ年にわたる助成金事業がはじまって、今年が最後の年なんだけど、難しいこともたくさんあった。商店街として取り組む事業は、それぞれが商売をしながらの事業だったから、そんなに大きなことはできなかったけど、若手の店主たちのネットワークができたのは、この3年間の成果かな。最近では和田岬の店主たちで街コンとかいろんなイベントの企画をしてます。そもそも商店街が振興組合化したのは、アーケード設置や道路整備とかのための助成金を申請するためで、法人格を持たないとあかんっていう神戸市の規定があったからなんやけど、助成金を取るための組合なんだったらもういらないんじゃないかと思っていて。むだな経費もあるし、赤字決算でも法人税を払い続けないといけないし。今、振興組合の会員は40人くらいいますが、その3分の2くらいが高齢者ということもあって、2018年度の総会で振興組合を発展的に解消して、商店街っていう一つのメイン通りだけで構成するものから、もっと大きなエリアとして活動する商店会にしたいと思っていいます。でも、これを機に商売を辞めてしまうお店がたくさんいそうで、心配かな。笠松商店街のことをここまで考えるようになったのは、先代の理事長のおかげで。その方が、今までの役員さんとか組合の会員の中を走り回って、根回ししてくれたからできていることがたくさんあるんですよ。だから、これからの商店街には若手と年配の方が繋がれるパイプっていうのがすごく大事になんだと思います。

自治会を発展させて、新しい福祉サービスをつくる

▲(写真:OGA提供)笠松商店街振興組合が企画し、ノエビアガーデンでおこなわれた夏祭り。

福祉事業で新しいことをしたいと思っていて。まだ構想の段階なんだけど、自治会ごとに福祉サービスの会員制度をつくったらどうかと考えています。自治会と福祉事業がタイアップすれば、自治会の会費を使って助けあえることがたくさんあるんじゃないかと思っていて。例えば、家にこわい人が来たら追い返す用心棒だったり、はたまた電球交換をしてくれる便利屋さんだったり。今の時代、訪問販売など高齢者にとって危険におよぶことが多々あるし、高齢者からお金を巻き上げようとする悪徳業者から地域の人を守りたいんです。それに、自治会の会費って何に使われているのかが明らかにされてないし、地域で餅つき大会みたいな行事ごとに使われるくらいなら、もっと日常的な地域のお困りごとにそのお金を使えたらなって思うんですよ。2018年4月から介護保険制度がガラリと変わって、今まで訪問介護サービスを受けられていた人が認定されなくなっている可能性もあるんです。例えば、食事や排泄が自分ではできない人に向けた介護サービスは絶対になくならないけど、歩行ができて買い物に行くとか、日常生活を送れる高齢者向けの介護サービスに対してはお金が出なくなってきています。だから地域にある小売店と高齢者を繋いで、身近なお困りごとの手助けを僕の会社で担えたらいいなと思っています。そういう、日常に転がっているお困りごとを見つけて解決するアイデアが見いだせたら、そこからビジネスが展開して行って、みんながWin-Winになれる面白い地域になって行くと思うんですよね。