F:machine 淵上俊介さんにまつわる4つのこと 異業種での経験が生んだ一風変わった機械屋さん

地下鉄海岸線苅藻駅から徒歩10分、新湊川沿岸にある昔ながらの工業地帯に工場兼オフィスを構え、木工関連機械の販売や修理をおこなう「F:machine(エフマシン)」。工場内では木工機械の展示会や2階の開放的なオフィスを使ってクリエイターの交流会がおこなわれることもあるそうです。機械屋さんとしては少し風変わりな展開をしている「F:machine」の代表、淵上俊介さんに事業を始めたきっかけや地域で仕事をすることの楽しさなどをお聞きしました。

文:山口葉亜奈 写真:岩本順平


「嫌なこと」からはじまった仕事のかたち

僕は定時制高校に通っていたので、16歳から働いています。どんな仕事をするのか決めるときに、「なんとなく」決めることが一番よくないと思っていたので、嫌いなものから始めてみることにしたんです。好きなものと嫌いなものってベクトルが一緒なんじゃないかなと思って。最初に働きはじめたのは鉄工所。父親が鉄工所で働いていたので、それを見ていて、日の目を見ない仕事だな、と思っていました。でも、2年ほど働いて、町工場の職人さんがいてこそ、日本の経済は成り立っていることに気づけましたね。その次が、配達業。車があまり好きではなかったので、運転を仕事にするのは嫌でした。ジャンルはなんでもよかったのですが、八百屋の配達を半年間しました。最後が、営業。人を口説くのがどうも苦手で。それでも機械系の商社に25歳まで6年間勤めました。その後、独立して「F:machine」をつくりましたが、結果的にその嫌いな要素が全部含まれていて、嫌からはじまったことが、今の事業の基盤になっています。今は、嫌いなものではなくて、やったことのないことをやろうとしています。新しいことをやってみると違う景色が見えたり、仕事の幅が広がっていくと思うんです。

地域ならではの仕事に取り組める誇り

「F:machine」は木工機械を主とした機械屋で、販売だけじゃなく、修理、製造、金属加工もおこなっています。木工関係以外にも、造船や家具、靴作りの会社にも出入りさせてもらっています。神戸は洋家具の発祥地と言われていますが、その家具を作る木工機械の販売や修理、「履きだおれの町」として有名な長田で、靴の中底や底の加工屋さんの機械修理もさせてもらっています。金属加工の方では、船の帆を張る滑車を製造していて、神戸で造っているのは多分、僕だけ。港町ならではの仕事ですね。「神戸」らしい仕事に携われているのは誇りです。自分がつくっているわけじゃないけど、機械や製造したものを通して「神戸ブランド」と関連する仕事ができているのはありがたいですね。

いろんな生産者さんと接していく中で、生産者さんの根底のお困りごとをくみ取って段取りできるようになってきました。コミュニケーションをとりやすいローカルだからこそ、ビジネスライクに対応するのではなく、僕ができることがあるのなら何でもやろうと思うんです。価格面ではネット販売に負けてしまうかもしれないけど、自分たちはプラスαの提案や柔軟性のある対応で「F:machine」で買うことの付加価値を高めていきたいですね。

チームで仕事をすることで拡がる可能性

製造とサービスを両立させるときに一番大変なことは、作業の途中で手を止めないといけないことなんです。どれだけ作業がのってきても、目の前のお客さんが一番最優先なわけで。すぐに頭を切り替えて、また作業に戻れればいいけど、そうはいかないんですよ。だから製造部分での基盤をしっかりさせるためにも、ある程度キャリアのある人を雇いたいと思いますけど、町と関係の深い仕事だからこそ、キャリアより人を見て選びたい。12年間一人でやってきて、3年前に仲間が2人増えたんですけど、チームになると喜びも苦労もありますね。それぞれクリエイティブな活動をしている2人で、鉄工の知識はないし、性格も全然違って。だからこそ、異なる角度から話ができて、新たなものをつくり上げることができる。一人だと煮詰まっていたことが、違う感覚の仲間達がいることで、可能性の幅が拡がるのは嬉しいです。ただ、感覚や性格が違う分、僕が何を大切にしているのか伝える難しさはありますね。ローカルで生きていくためには、人と人の関係をいかにうまく築き上げるかが大切だと思っています。販売ってすでに決まっている商品を扱うわけだから、結局物じゃなく自分を売るしかないんです。だから2人にはコミュニケーションの大切さを毎日のように伝えてますね。

人のつながりから生まれた仕事で町に還元する

3年前に長田に事務所を移すまでは、垂水区で12年間事務所を構えていました。長田には祖父母の家があったので、馴染みもあり、ずっと移転を考えていたのですが、なかなかタイミングがなくて。そんな時に、六間道3丁目商店街にレンタルスペース「r3(アールサン)」がオープンするから椅子の脚をつくって欲しいと、知り合いの家具屋さんから依頼があり、納期が1週間しかなかったんですが、引き受けました。「r3」管理人の合田さんは、幅広い人脈を持っている人なので、一緒に仕事をしたら何かと広がるんじゃないかと思って(笑)おかげさまで、ここから長田での新たな繋がりができて、仕事の幅も広がりましたね。この町には、たくさんの業種の人がいるから、本当に様々な仕事をいただいています。この町に生かされてるなぁ、って思いますね。こういうコミュニティがあるところだと、仲間内でお金が関わらない助け合いになりがち。それって聞こえは良いけど、町としては発展しないと思うんです。だから僕は、この町できちんと仕事をして、お金を落として、この町にとってプラスになるような形で還元していきたい。