株式会社三栄 服部真俊さんにまつわる4つのこと 歴史ある場所で唯一残った材木屋の、ものづくりの支え方

和田岬駅から徒歩10分。兵庫運河沿いにある北欧ビンテージ家具屋&カフェ「北の椅子と」のお隣にあるのが、材木屋の「株式会社三栄」(以下「三栄」)のオフィスと製材所。材木町という町名を持つこのエリアは、兵庫運河が整備された1899年頃から材木屋が立ち並んでいましたが、現在も製材機能を持つ材木屋はここ1軒のみ。4代目として、ものづくりを支え、この場所を守り続ける「三栄」跡取りの服部真俊さんにお話を伺いました。

文:高木晴香 写真:岩本順平


材木屋たちの歴史を担い、事業を続けること

「三栄」は1931年に創業した材木屋です。材木屋と一口に言っても、梁や柱などの建築材を扱う会社や、山から木を伐りだす企業など商売の形はさまざまです。僕は4代目の跡取りとして、家具に使用される木材をメインに、全国の木工所やオーダー家具屋さんに販売しています。また、「三栄」は神戸市内で唯一、丸太の製材もしており、社長である父と職人さんが担当しています。材木町には、その名が表しているように大正時代から材木屋が立ち並び、多い時は20軒以上もあったそうです。海外から神戸港に届いた丸太が兵庫運河で運搬され、貯木場に保管され、このあたりで製材をしていた。現在は丸太そのものではなく製材された状態で木材が輸入されるので、製材の需要が減少して、次々と廃業してしまって。この周辺で製材所の機能を持つ材木屋は「三栄」1軒しか残っていません。僕たちは製材以外にも、家具に使う木材を幅広く扱っているため経営を続けてこられました。材木屋の仕事を続けるために、同業種間のつながりも大切にしたくて、僕は「兵庫県木材青年クラブ」に所属していて、来年度は会長を務めます。そこでは木材の仕事に携わる人が集まって、勉強会や全国の産地への見学会をしているんです。材木業界では、売り買いの関係が逆転して仕入れ先に販売したり、加工を助け合ったりと、他社との協力が欠かせないんです。

自分たちにしか応えられないニーズがある

1軒だけ残った製材所だからこそ、ずっと残していきたい。終わってしまえば二度と復活はできないから。そんな思いはありますね。それに、製材のニーズって、まだまだあるんです。僕たちの取引先の多くを占めるのは2〜3人で営業しているような木工所や家具屋さん。製材済みの木材を仕入れるより、丸太を買って自社で製材した方が安価な状況でも、小規模だと丸太ごと買えるほどの資金がなかったり、保管や管理に広い場を確保することが難しい。だから、「三栄」では木材のばら売りもしているんです。一般的にはコンテナ単位で大手メーカーに販売するような商品も、必要なときに必要なだけ買ってもらうことで、小さな企業の効率的なものづくりに繋がる。大きな会社じゃできないことを、僕たちはやっていかないといけないと思うんです。また、寸法が一定数揃わないと捨ててしまうような材木まで取り扱っていることも大手にはない強みですね。僕たちが長く続けてこられたのは、目の前にある兵庫運河を利用できたのが大きな要因のひとつで、この運河とは切っても切れない縁があるんです。だから、運河を利用していた材木屋を中心に結成された「兵庫運河を美しくする会」にも参加していて、周辺企業と一緒に清掃活動や環境学習なんかにも取り組んでいます。

「北の椅子と」と共存することでできた、地域に関わるきっかけ

事務所の裏手、製材所のある建物の1階の半分と2階部分は、姉夫婦が経営する北欧ビンテージ家具屋&カフェ「北の椅子と」になっています。僕が子どもの頃の製材所って、取り扱う物量も職人さんも多いから、危なくて近寄らせてもらえない場所だったけれど、今は雰囲気が随分変わりましたね。2階のカフェスペースは、もともとは木材を切断する工具の「のこ」を研磨するスペースだったんですよ。製材所をそのまま残すかどうか迷っていたけれど、お店と共存させることで人との出会いが増えました。例えば、2017年から「兵庫駅南公園」で行っている「こどもフェスタ」というイベントに立ち上げから関わることになったのも、カフェによく来てくださっている「神戸市立兵庫図書館」の館長の垰下憲司さんに声をかけていただいたから。それから地域の人と顔を合わせる機会が増え、まちの人と関わりを持つことで地域への愛着がもてるようになりました。木材の世界ってすごく狭いし、一般の人に販売しているわけじゃないから、地域の人たちとの接点ってほとんどなかったんです。いつか「北の椅子と」に来たお客さまにも、うちで製材した木材を気軽に手に取って使ってもらえる仕組みをつくりたいとも思っています。

日常の中で木にふれあい、木を学ぶ

「こどもフェスタ」は子どもたちがしたいことを実現するために、大人が持っているものを持ち寄ってサポートするイベント。僕は「木育」を企画して、子どもたちに木を使って椅子や踏み台などをつくってもらう自由工作をしています。子どもたちと丸太からベンチをつくったこともあり、今も公園で使われているんですよ。ちなみにベンチの材料には神戸市の街路樹を使用しました。神戸市は全国一街路樹が多い地域なのですが、大きくなりすぎて管理が大変な木があるので活用してほしいという相談があったんです。今までは市が管理していて入手できなかったのですが、最近は購入できるようになって、新たな使い道を模索中です。子どもたちには、街路樹という身近な木がどうやって材料になり、ベンチに変わるのかを伝えました。僕は「木育」って、人と木のかかわりを考えるきっかけづくりだと思っています。身のまわりのものがどんな素材から、どんな過程を経て完成したのかに興味を持つことで、自分たちの生活が木に支えられて成り立っていることを感じられると思うんです。こうしたことが大人も子どもも日常の中で実感できる世の中になってほしい。だから、「こどもフェスタ」のような地域のイベントに出向いていくことを大切にしていきたいですね。