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10/16 下町芸術大学 山下香編「おかんアートの展開から考えるローカルプロジェクトのひろがり」

2018年12月17日


10月16日、第7回目の下町芸術大学が兵庫区にある「旧岡方倶楽部(小物屋会館)」にて開講されました。
会場となった「旧岡方倶楽部」は、昭和2年に兵庫の商人たちの社交の場として建立された建物で、当時のレトロな雰囲気が感じられるとても素敵な場所でした。
講師を務めてくださった山下香さんは、流通科学大学の准教授として、さらに一級建築士事務所「状況設計室」の建築士として設計活動とまちづくり活動を研究しています。今回のテーマは「おかんアートの展開から考えるローカルプロジェクトの広がり」。本講義では、おかんアートが展開される過程から、地域で行われるプロジェクトの広げ方を学びました。最後にはワークショップを行い、参加者同士での意見を交換するなど、学びの多い講義となりました。

レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

おかんアートとの出会い


「おかんアート」という言葉にあまり耳馴染みがないかもしれません。おかんアートとは、母が作る手芸作品の総称。例えば、おばあちゃんの家に行った時に、見かける毛糸で作られた犬や有名なキャラクターを模したフェルト人形など。みなさんも一度は見た事があるかもしれません。それらはすべておかんアートなのです。

まずは、山下さんとおかんアートとの出会いについて教えていただきました。
山下さんは2005年より兵庫区長田区を拠点に「下町レトロに首っ丈の会」を結成し、下町遠足ツアーなど、下町の魅力を発掘・発信する活動を行なっています。下町遠足ツアーを重ねていくうちに山下さんは、あることに気づいたそう。それはツアーで巡る先々にいつも人知れずおかんアートが生息しているということ。山下さんはそれらのおかんアートがどのように町中に広がったのかが気になり、作品を見つけるたびにだれが作ったのか聞いていったそう。そうして出会ったおかんアートの製作者たちに同じようにおかんアートを作っている人はいないか尋ね、樹形図のようにおかんアーティストたちと繋がっていきました。

おかんアート展が人気イベントになるまで


今年で第9回目を迎える「おかんアート展」は2009年より毎年開催され、今では人気イベントとなりました。では、はじめはどんな感じだったのでしょうか。
まず第1回目では「おかんアート展」を企画する際に、おかんアーティストたちにこれまでで一番思い入れのある催しについて話を聞いたそうです。するとみんな口々に「ダンパは楽しかった」と語ったそう。ダンパとは、ダンスパーティーの略のこと。それならダンパを開いちゃおう!と、第1回目はダンパがメインのおかんアート展となりました。第2回目からはもう少しおかんアート展の要素を強めるため、展示のプロデュースをおかんアーティストたちに任せ、自己紹介や作品解説をお願いし、おかんアーティストの存在を前面に押し出したそうです。すると、おかんアーティストたちは日の目をみたことでおかんアート展に対して積極的になり、第3回目ではおかんアーティストたちの提案で教室が開催されました。第5回目を開催する際にはおかんアーティストたちが主体となって月1の企画会議が行われ、気付けば運営資金獲得のために出店料を徴収するなどマネタイズまで考えるようになったそうです。また、徐々に名が知れるようになった「おかんアート」に固定ファンがつくようになりました。最初は主催の流れに身を任せて展示に参加していたお母さんたちが、回を重ねていくうちに自ら企画し、お金の流れを作り出すという主体的な存在に変わっていったのです。

おかんアートを支える“取り巻き”の存在


「おかんアート展」はおかん、つまりアーティストだけで運営されているわけではありません。 “取り巻き”の支えがあったことが10年間続けられた秘訣であるといいます。
“取り巻き”とは、おかんアートをこよなく愛し支える若手スタッフたちのこと。おかんアート展の特徴は「取り巻きが勝手に事務局となって運営されている」ところにあるそうです。若手スタッフたちは作家であるおかんアーティストたちに尊敬、興味、愛着を抱き、集まってきたのです。異世代と出会えることや、楽しそうだからということを動機として集まる方が多いそう。
おかんアートを支える取り巻きたちの一つの特徴として、アーティストよりも取り巻きが熱を上げるという現象が起こるそう。例えば、おかんアート展では
作品の販売も行っているため、もともとは売るために作っているのではなかったおかんアートが、徐々にトレンドを取り入れた“売れるおかんアート”化しているらしく、それに反発する取り巻きたちが出てきたそう。おかんアートが好きだからこそ、ただ創作意欲のままに生み出されてきた本来のおかんアート意義を求める動きが強くなっているのです。山下さんは、このようなおかんアートを熱く盛り上げる取り巻きは、おかんアート展を長く続けるにあたってとても大切な存在だと振り返ります。

おかんアートを地域資源として捉える


次に、山下さんが所属している「下町レトロに首っ丈の会」が発掘・発信している「地域資源」についてお話いただきました。地域資源とは、その地域にしかないもの。地域資源は大きくわけて2つに分かれます。
・目に見える宝(例えば…物的資源、名物、建物などの地図上に残るもの)
・目に見えない宝(例えば…地域の名物住人、風習、お祭り)
とりわけ「下町レトロに首っ丈の会」では目に見えない宝を大事にしているそう。おかんアートはまさに「目に見えない宝」です。一見、おかんアート自体は「もの」であるため、「目に見える宝」のようですが、おかんアートの裏側に隠れるストーリーや、お母さんたちの知識や技能、活動こそが「目に見えない宝」なのです。例えば、お母さんたちがおかんアートを交流のきっかけとしていることや、おかんアート展を通じてお母さんたちの技能を発信していったストーリーのことです。一見、目に見える宝も、その裏側に隠れるものを突き詰めていけば、見えない宝も一緒に見つけることができます。

質疑応答

今回は山下さんの希望で参加者全員が順番に質問や感想を挙げていきました。
ここでは、私が特に印象に残っている質問をご紹介します。

参加者:ただおかんアートを楽しむだけでなく、おかんアート展などを計画的にするようになった転換点はありますか?
山下さん:もちろん楽しむことはすごく大事です。ですが、楽しいだけでおかんアートを続けていたら、3年くらいで「何のためにやっているんだろう?」と思うようになってきます。実際に下町遠足ツアーも、「何のためにやっているんだろう?」となりました。でも、私はツアーを地域資源を発見するためにやっている、という風に割り切っていました。おかんアートについては、地域資源であるおかんアートがどんな繋がりをもって、どういう風に活動しているのかを見る実験だと思っています。

参加者:おかんアートのゴールはどこにありますか?
山下さん:主体的な人材を育成することです。人口減少社会にともない、私たちは今まで他の人がやってくれていたことをしなければならないようになってきました。その時に、主体的に動ける人が必要であると考えたのです。おかんアートを通じて、主体的に何かをできる人を育成できることを目指しています。例えば、若い人はボランティアや自治会などに参加する余裕がないですよね。しかし、おかんアートには興味を持ってくれる人がいます。おかんアートという実践的なコミュニティに参加することで、知らないうちに彼らは主体者になっています。

この町の地域資源を見つめるワークショップ

ワークショップの様子

最後に参加者全員でワークショップを行いました。
今回の講義を踏まえ、この町にある「①目に見える資源」「②目に見えない資源」とは何か。また、「③それらを組み合わせることでどのようなコンテンツが生まれるのか」を考え、3グループに別れてディスカッションをおこないました。
ワークショップを通して、目に見えない資源を探すことの難しさや、地元の人がさほど気にしていないことも、外の人から見ると面白いことが多く眠っていることがわかりました。
山下さんは、地元に何気なくあるものでも、それらの裏側にある物語を見つけるだけで面白いものになるとおっしゃっていました。そして、目に見える資源と目に見えない資源が組み合わさったものが文化的景観になることも学びました。

本講義では、ローカルプロジェクトの広がりについておかんアート展の展開を例に学びました。またローカルプロジェクトにおいて、「地域資源」が重要なキーワードとなり、地域に眠っている「目に見える宝」と「目に見えない宝」たちを発掘し、それをいかにプロジェクトに盛り込んで生かしていくかが大切だということを感じました。

ブログ一覧

主催

新長田アートコモンズ実行委員会、DANCEBOX

企画協力

千十一編集室

助成

平成30年度文化庁劇場音楽堂等活性化事業(db)、兵庫県県政150年記念事業、
神戸市「協働と参画」推進助成、大阪コミュニティ財団